青緑の美しい表紙に魅かれて有川浩さんの小説を借りました。
印象的だったのは呆れるぐらい子どもっぽいお父さん。
読み終えて思い出したのは私の母親のことでした。
アンマーとぼくら
青緑の美しい色に惹かれて手に取りました。
(海、だよね。)
こころの中で確認しちゃうぐらい、美しい装丁です。
文庫本も美しい海が引き継がれているのね。
休暇で沖縄に帰ってきたリョウは、親孝行のため
「アンマーとぼくら」 帯より
「おかあさん」と島内を観光する。
一人目の「お母さん」は リョウが子供の頃に亡くなり、
再婚した父も逝ってしまった。
観光を続けるうち、リョウは
何かがおかしいことに気がつく。
物語自体がちょっと特殊な構造になっていて
読者はなんだろう、なんだろうと違和感を感じながら
ページをめくることになる。
読み始めるとページが止まらなくなり
ついに一気読みをしてしまいました。
お父さんの子どもっぽさ
「ーだって!」
「アンマーとぼくら」より
父が、まるで癇癪を起した子供のように、叫んだ。
「仕方がないじゃないか!」
仕方がないって、何が。
「お母さんは、俺を置いて、死んじゃったじゃないか!」
そして、父は、うわーっと声を上げて、ないた。
泣きじゃくった。
まるで火が点いたように、泣きじゃくった。
「リョウが覚えていたら、俺も思い出しちゃうじゃないか!」
父親と小学生のリョウが2人だけで残波岬(ざんぱみさき)に出かけた時のこと。
母親の三回忌に行きたがるリョウに、父親は行くのを辞めないか、と渋る。
そんな中、2人の事情を知るらしい謎の人物が現れて・・・・
つづきは本で読んで欲しいのだけれども。
それまで、物語の中では子供っぽい父親の困ったところが
僕の視点でたびたび描かれていた。
さぞ、子どもだったリョウもいたたまれなかっただろう。
そう思いながら私は読み進めていた。
あくまでも、子どものリョウくんに同情していた。
子供っぽい親を持つと大変よね。
私もわかるわ。
そんな気分だった。
でも、このシーンを読んでそこから変わってきた。
謎の人物の活躍もあるけれど。
父親の子どもっぽさゆえの素直さに
とても胸を打たれたのだ。
気持ちをそのまま伝える強さ。
ああ、そうだよなあ。
これって、すごいことなんだよなあ。
と改めて思った。
私の母も
私の母も子どもっぽいところがあって
私は常にそれに振り回される被害者だと思っていた。
台風の時には警報が出ているのに、
川の増水の様子を見に出かけてしまう。
そのくせ、避難所には避難しない。
理由は「避難所の方が水深が低いから」。
もっともらしい理由をつけるけれど、
人が大勢いるところで集団生活をしなくちゃいけないのが嫌なんだと思う。
草木が大好きで、団地内に除草剤が撒かれると
自治会で怒りまくったために、
浮いた存在になってしまったそうだ。
空気を読まない。
自分が思った通りに行動する。
その様子を聞いているとこっちはハラハラするぐらいだ。
「どんどん子どものようになっていくわあ」
母親は自分でも言っている。
娘の私としては、もう少し立ち回ったり、
うまい主張の仕方があるだろうに。
と思うのだが、そんなことお構いなし。
そんな様子を見て、どうしたものかなあ。
と思っていました。
そんな母親がいるからこそ
ただ、ここ何年か。
自分の思っていることを周りの人に伝えるときに
母親のことを思い出すことがよくあることに気がつきました。
つい先日も。
主人に週末の過ごし方について聞かれた時も。
ちょっと体調がいまいちで何かをしようという気になれない。
と率直に伝えることができた時のこと。
主人は休みの時に、私のプランを優先してくれようとする。
だから、聞いてくれるのです。
「今日は何して遊ぶの?」
だから、元気に「〇〇しよう!」と答えるのが
私の役目だと思っていたところがあったと思う。
それが夫婦円満の秘訣のように思っていた。
ただ、最近は本当に疲れ気味で何かをしようという気が起きない。
いつもの生活はなんとなく送れるけれど、それ以上のことをしようと思えない。
今までの私だったら、そんな気持ちは隅に置いておいてどうにか元気を装ったかもしれないけれど。
近頃はそんなこともできないぐらいにだるくて眠かった。
主人に伝えながら思いだしたのは母親のことだ。
母親は相手がどう思おうと、カッコ悪くても
自分の思ったことはちゃんと伝える。
こころの中に母親というお手本がいたことで
私は素直に自分の気持ちを伝える勇気がもてた。
ちょっと手に負えないと思っていた母親が
いつの間にか私の大事なお手本になっていた。
有川さんの本を読んでそんなことを思い出したのだ。
そんな母親は沖縄生まれ
「アンマーとぼくら」が出版されたのは2016年。
まだ 首里城が焼けてなかったころだ。
首里城が焼けてしまった時も母親はパニックになっていた。
「もう泣けて泣けて」と話していた。
今でもその話になると、ぜひとも再建しなくては。と
演説が始まってしまう。
先日、物資を送ったお礼のハガキが送られてきた。
いきいきとした植物たちは、母が育てているものだ。
「神の庭園」と言葉が添えられていた。
神・・・はどうかと思うけど(笑)
元気そうな緑に癒される。
青空がまぶしい季節。
沖縄の海もさぞかし輝いていることだろう。
大切な人が元気でいることは何事にも代えがたい。
当たり前の毎日が、かけがえのないものであること。
少し思い出しました。
よいお話でした。
それでは また☆
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